自分で製材してみよう 〜木から木材へ〜

庭で木を伐った、公園で木を伐っているのでちょっとした丸太をもらえそう、そんな機会はわりとあるのではないかと思います。製材所に持って行くような大きな丸太ではないけれど、ちょっとした幹や短い丸太を手に入れた。そんなとき、これを木材にするにはどうしたらいいでしょう?


〈公園で伐られた木:棄てる前提の伐採では、太い幹でも写真のように短くしてしまうことがほとんどです〉


〈お庭で伐られたサザンカ:直径15cmくらいのものですが、この程度のものでも上手く製材すれば、大きなスプーンやちょっとした器程度は作れます〉

マチモノではこれまで、木取材からスプーンやお箸、器などを作って頂くワークショップをたくさん開催してきましたが、今回はその「木取材」を丸太から作ることにトライしました。

※木取材:丸太を製材して乾燥させて、四面四角にカンナ掛けをして、ものづくりの素材としての準備ができた木材。

製材と言えば製材所のお仕事となるわけですが、今回はちょっとした丸太を、自分が汗をかいてもいいからお金をかけずに、身近な工具、せいぜい数千円〜1万円もあれば手に入るような道具で、いかにして木材にするのかを学びました。


〈まずは木取りのいろはを学びます〉           〈お椀を作るにはどんな木取りか適切か?〉

 【方法その1:木を割る】


〈太さ35cm、長さは1mくらいの山桜。斧と堅木で作ったくさびをハンマーで打ち込んで割って行きます。山桜に限らず桜類は割れにくい性質の材なので大変ですが、樹種によっては簡単に割れるものもあります。〉


〈作るものに合わせた木取りと大きさになるように、割って行きます。斧で大体の形にできたところで、カンナを掛けてあらかたの形を整えました。上の写真の材はお椀用なのでかなり大きく木取りしています。〉


〈こちらは細い木、サザンカ(左上写真)と柿の木(右上写真)。先ずは玉切り。丸太を長さ方向で分ける切り方を玉切りと言います。木は丸太の場合はもちろん製材して板や角材にした場合にも、乾燥にともなって端の部分(「木口」と言います)から割れが入ります。その分のロスを見込んで、実際に作りたいものよりも長く余裕をもって玉切りします。〉


〈丸鋸がある場合には、丸鋸で切れ目を入れておくのも良い手です。丸鋸はホームセンターで気軽に買える電動工具ですが、小さなものを切るのは危険なので要注意。また木を縦に割るような切り方では、木が刃を挟み込むように締まり、丸鋸が手前にスゴい勢いで戻って来ることがあります。丸鋸は刃に触らないよう注意していれば安全、というわけではありませんので、ほかにもどのような事故が起こりうるのか、良く理解をしてから使うようにして下さい。〉

「木を割る」という製材方法は、ノコギリ(縦挽き鋸)が登場する以前に一般的であった古い古い方法です。木は木の繊維に沿ってしか割れませんので、必ずしも真っ直ぐに割れるというわけではなく、木がもつ個性の通り割れるわけです。これはノコギリで、木の個性がどうあれ真っ直ぐに切ってしまうよりも、より自然に近い、無理を強いない製材方法であると言えます。

四面四角でない不整形な木材を加工してものを作るには、四角い平らな材を扱うのに比べてはるかに大きな手間がかかるわけですが、個性を殺さずに活かし、個性というクセを組んで全体として良いものにする、そんな無理を強いない木の使い方ができるのであればそれに越したことはありません。そのやり方が優れていることは、世界最古の木造建築物である法隆寺がそのようにして造られていることからも分かります。

 【方法その2:木をノコギリで縦に伐る】

木を縦に伐ることを縦挽きと言いますが、縦挽きができるノコギリの登場は、日本では室町時代と言われています。上右写真の大きなノコギリは大鋸と呼ばれる製材用のノコギリです。大鋸を使うには自分で目立て(刃の研ぎ)ができなければなりませんので、それなりにハードルが高いのですが、上左写真のように市販されている普通のノコギリ(縦引き鋸を使います)でも、細い木であればそれなりにどうにかなるものです。

とにかく根気が必要ですが、丁寧にやればかなり真っ直ぐな材が得られます。

また、電動工具の丸鋸と併用すれば、丸鋸の刃が届かなかった残りの部分だけをノコギリで切れば良いので、かなり楽になります。根気のいるやり方ではありますが、丁寧にやればかなりまっすぐに切れるので、とりわけ細い丸太では有効な方法です。

 【この日の成果】


左から山桜、サザンカ、柿、椿:カトラリー用       柿の木:木べらとスプーン用の材


山桜:ククサとお椀用                  サザンカ:スプーン用

製材したての木材は、まだ材のなかにたくさんの水分を含んでいます。製材され、樹皮がなくなり板や角材にされた木は、丸太の状態で置いておくよりも遥かに早く乾いて行きます。そしてその過程で、程度の差はあれ必ず狂い(反りなどの変形や収縮)や割れが出てきます。

ですので、製材をする際には実際に作りたいものよりも一回り以上大きいサイズで製材し、乾燥させて狂いを出してからまたカンナ掛けなどをして、目的のサイズに仕上げていかなければなりません。その木がどの程度狂うのか? どの程度のマージンをとって置けば良いのか? こればかりは経験に基づく勘で判断するしかありません。

これらの材はこれから「自然乾燥(天然乾燥)」 の行程に移されますが、そのやり方についてはまた別の記事でご紹介させて頂きたいと思います。

 【使用した道具】


〈大鋸:製材用の縦挽き鋸。現在ではほとんど使われていないちょっと昔の道具です〉

〈斧とハンマー:古い民家から出た斧やハンマーに街の木で柄を挿げ換えて直したもの。柄材は上から、モッコク、白樫、白樫、ミカン〉

 【まとめ】

製材をするのは「製材所」、それはもちろんそうなのですが、ちょっとした幹や手で持てる程度の丸太を手に入れたからと言って、製材所に持込むというのはハードルが高いですよね。

製材に使える機械としてはバンドソー(帯鋸)というものがありますが、これもちょっとばかり使いたいから、ということで買える値段ではありません。

というわけで今回は、どこの家にもありそうな道具やせいぜい数千円〜1万円程度で購入できる道具(丸鋸や斧など)を使って、ちょっとした丸太を木材にすることにトライしてみました。もちろん楽にできることではなく、いっぱい汗もかきましたが、みんな立派な木材を作ることができました。

今回得られた木材を使ってのものづくりの様子は、また別の機会にご紹介させて頂きますので、ご期待下さい。

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