マチモノのがっこう 木工ものづくり講座001 「カンナを学ぼう!」

マチモノ代表の湧口です。このページでは、木工に必要な基本的な道具(手工具)をご紹介させていただきます。お勧めの木工刃物は、私が実際に仕事に使っているものです。作家の作品であるとか装飾的に磨き込んで仕上げてあるといったものではありませんが、プロのレベルのきちんとした仕事ができるもので、かつリーズナブルなものを選んでご紹介させていただきたいと思います。

最低限必要な木工手工具ってなにとなに?

*ノコギリ:両刃ノコ一本、もしくは両刃コノ+導突鋸

上写真の一番下のノコギリが両刃ノコ。一本のノコギリに縦引き用(木材の繊維に沿って切る)と横引き用(木材の繊維と直行して切る)の2種類の刃が両方ついているものです。縦引き用と横引き用をバラバラに揃えてもOKです。替刃式が一般的。両刃ノコ1本だけでも良いですが、導突鋸(どうつきのこ)と呼ばれる精密加工用のノコギリを加えるとなお良いでしょう。ホームセンターにある替刃式で評判の良いものを選べばOKです。大きさも色々ありますが、これは自分が加工したいものの大きさによって変わります。それほど大きくない家具や小物であれば小さめのものでOKです。

一つご注意は、庭木の剪定などに使うノコギリは用途が別だということ。庭木の剪定などに使うノコギリは刃の幅が1mm以上ありますが、木工や大工仕事で使うノコギリは、もっと薄いペラペラのノコギリになりますので、ご注意ください。

*ノミ:8分(24mm幅の刃)一本

木工で使う基本のノミは、追入ノミというタイプのノミで、玄翁(金槌)で叩いて使えるタイプのノミです。平ノミという言い方をすることも。

ノミは最低限というと8分一本ですが、材と材を繋ぐほぞやほぞ穴を作る際、必ず3分(9mm)が必要になります。また一番小さい1分(3mm)のノミも、それでなければ入らないところを加工するのに必要ですし、カンナの仕込みでも必要になることがあります。ですので、普通は最低3本揃えなければ仕事はできません。この3本にさらに加えるならば、5分(15mm)と1寸2分(36mm)を加えて5本組でしょうか。

購入にあたって、サイズの他には鋼の種類、が気になるところです。何セットも揃えるつもりなら別ですが、最初に買うのであれば、「青紙1号鋼」という鋼のもの一択です。他に「白紙鋼」や「ハイス」と呼ばれるものもありますが、「青紙」は「白紙」より硬く「ハイス」よりは柔らかく研ぎやすい。柔らかい木から堅木まで使え、研ぎやすい、これを買っておけば間違いありません。「ハイス」は硬いので良いように思うかも知れませんが、硬い鋼を研ぐのは大変で、きちんとした研ぎができないと一度崩れた刃物の形を直すことができず、使いこなすことができません。また、刃こぼれをした場合に直そうにも、グラインダーがなければ気が遠くなる時間、研がなければならなくなってしまいます。

*カンナ:小鉋1本


小鉋、と言っても大きさは30〜50mmくらいまで色々ありますが、最初の一本(万能の一本)ということでは48mmくらいのものをお勧めいたします。

お勧めは大工刃物の町、兵庫県三木のトップメーカー、常三郎の青紙一号鋼、48mmで8寸台のもの(上写真中央)です。大きすぎず小さすぎず、一本だけ持つなら(何本も持っていても)丁度良いサイズ。鋼は青紙1号という堅木にも使えかつ研ぎやすい鋼。私も2本持っています。

鉋の2本目には、48mmより大きな大鉋、また反対に小さな30〜36mmくらいの鉋が欲しくなります。また、同じサイズの鉋がもう一本あれば、刃の出し具合を変えて2本使いできるので、仕事が捗ります。

カンナは替刃式のものもありますが、本格的に木工を学ぶのであれば、替刃式でないものをお勧めいたします。

鋼の種類は、カンナも青紙を買っておけば間違いありませんが、カンナの場合は少し硬度を落としたハイスのものもあり、ものによってはオススメできるものもあります。

玄翁(げんのう)

玄翁、一般的には金槌という呼び方がされているでしょうか。木工では、ノミを叩いたり、カンナの刃を出し入れするのに主に使用します。とりあえずはホームセンターにあるようなもので十分です。

問題は大きさですが、最初の一本ということであれば、だいたい225gかもう少し重いくらいのものが良いのではないかと思います。225gくらいだとノミを叩くのにはもう少し重い方が力強いという感じもしますが十分に叩けますし、カンナの刃の出し入れを調整するにはあまり大きくない方がやりやすいのです(上の写真は225gの鍛冶屋さんが作った玄翁の頭に、ハナミズキで柄を挿げて漆塗りしたもの)

*白柿(シラガキ)

白柿とは、木材に加工する線を引く道具です。本格的な木工では、鉛筆ではなく白柿と毛引を用います。なければ始まらない道具。写真の白柿は刃先が剣先(刃先がV字型)になっていますが、これは私が自分で加工して改造してこうなっているもので、一般的な白柿はV字型ではありません。左利き用もあります。

*毛(罫引、けひき)


白柿同様、加工する線を引く道具です。スコヤと白柿で材料に対して垂直な加工線を引き、毛を使って材料の基準面と平行な加工線を引くのです。上左の写真が毛ですが、これは私が自作したものなので、一般的なものとは少々形が異なっています。上右写真は「二丁鎌毛引」と呼ばれるもので、2本の平行線を同時に引けるようになっています。二丁鎌毛引で1本だけ引くこともできます。どちらを購入しても大丈夫です(本格的に仕事をする人は、1本では仕事が遅くなるので何本も欲しくなるものです)。

*金尺(金属製の定規)30cmとスコヤ

上左写真が金尺、私はシンワ測定の15cm、30cm、60cm、100cmを使用しています。一本だけなら絶対30cm。amazonで600円くらいで売っています。

スコヤ(上右写真)は金尺、白柿とセットで使います。材料に直角の加工線を引くのに使います。私はシンワ測定の15cmを主に使用しています。amazonで1000円ちょっとで売っています。

ノギス

材料のサイズは幅×奥行×厚み。幅と奥行は金尺で測るとすると、厚みを正確に測るのに必要なのがノギスです。大きさは上写真の上のもの、シンワ測定の15cm(実際はもう少し長い目盛が刻まれています)がオススメです。

*砥石2本(中砥、仕上砥)

砥石は最低2本必要です。刃を付ける中砥と中砥の後に使う仕上砥です。私はキングというメーカーの#1000(中砥)と#6000(仕上砥)を基本的に使用しています。キングの#1000は古くからある最も標準的な砥石で、赤レンガのような感じです。

砥石は使うことによって刃物でこすられた部分が削れていき、変形していきます。変形したままだと上手く研げないのでマメに平面に直せ、という解説は普通に世間でされていますが、そのために専用の砥石を治すための砥石(のようなもの)でこすったり、砥石二本を擦り合わせたり、乱暴にやる人はコンクリートブロックにこすったりします。私もかつてしていました。

キング#1000は価格も非常に安く入手性も最高なのですが、欠点(本当は欠点ではないのですが、研ぎが分かっていない人にとっては欠点にしか見えない)は平面が崩れやすいこと。そのため、平面が崩れにくいキング#1000よりも高価なセラミック砥石と呼ばれる砥石の方がむしろ人気があるかもしれません。

木工で好まれているセラミック砥石の代表はシャプトンというメーカーの「刃の黒幕」というシリーズで、こちらの場合、2本使いなら#1000と#5000をお勧めいたします。私も一時、というか今も所有しています。これを買った頃は、平面が崩れにくいことが大きなメリットに感じられました。プロの木工家の間でも大変評判の良い砥石です。プロの木工家の大半はシャプトンかキングだと思います。

キング、シャプトン「刃の黒幕」共にネットで検索すればいくらでも売っているところを見つけられます。どちらを購入しても間違いはありませんが私は、初めて買うなら、そして平面が崩れやすいことがなぜ問題ではないのか、ちゃんと教えられる人が身近にいるなら、キングをお勧めいたします。理由は安いから。

お金に余裕がある人は、両方とも購入しても良いかもしれませんが(どのみち消耗品ですし、工具は買えば買うほど勉強になります)、限られた予算で色々な道具を揃えたいという場合には、砥石の差額で他のものを買った方が幸せかなと思います。どちらの砥石もちゃんと使えばきちんとした仕事ができます。

小刀

片刃の小刀で、右利き用と左利き用とあります。スプーンを作ったり彫刻的な物を作るのであれば必ず必要になります。

丸ノミ(内丸ノミ)

スプーンの口のところの窪み部分を掘ったり、器などの窪み部分を掘るのに使います。彫刻刀の丸刀を大きくしたようなものですが、大きくて頑丈です。また、彫刻刀のように手で持って掘ることも、玄翁で叩いて掘ることもできます。刃の部分の幅によりいくつか大きさがありますが、スプーンを作るくらいであれば、12〜18mm程度のものが個人的にはやりやすく感じています。首が曲がったものもありますが、こちらはより深く掘るお皿などの場合は重宝します。スプーンくらいでしたら、ストレートのもので十分可能です。丸ノミには、刃の付き方によって「内丸ノミ」と「外丸ノミ」がありますが、スプーンや器の凹の部分を掘るのであれば、写真の内丸ノミを使います。

その他、あると良いもの

上にあげたものはこれを買わずにどうするの?というくらい基本的なものですが、それらよりは優先度が低いけれど(木工教室や職業訓練校では貸してくれることが多い)、一人になったら自分で揃える必要が出てくるもの。

*下端定規(したばじょうぎ)、ストレートエッジとも言います。

カンナの仕込みに必要な道具で、金属製の分厚い定規のようなものです。カンナの台の平面をチェックするのに必要です。こちらも自作が可能で、私も自分で作ったものを使用しています。

*台直しカンナもしくは台直し用のスクレーパー(鉋を使い続けるなら必ず必要)

 

下端定規でチェックして、台直しカンナかスクレーパー(商品名:常三郎 したば君L型 鉋台調節用)で削って鉋の台の調整を行います。台直しカンナは普通のカンナと同等かそれ以上の価格であるのに対し、スクレーパーはamazonで1000円ちょっと。なにはともあれスクレーパーは購入して損はないと思います。なければ台の調整が自分でできませんので。

*ダイヤモンド砥石(鉋、ノミを使い続けるなら必ず必要)

平面が崩れない砥石。こちらも鉋やノミの仕込やメンテナンスに時折使用することになるので、普通の砥石とは別途必要です。電着ダイヤモンド砥石(安価、十分長持ち)と焼結ダイヤモンド砥石(かなり高価、とても長持ち)がありますが、まずは安価な電着ダイヤモンド砥石を購入することをお勧めいたします。こちらは、普通の砥石を平面に直すのにも使えます(焼結ダイヤモンド砥石は砥石直しには使えません)。

電着ダイヤモンド砥石は片面が#400(粗目)、反対面が#1000(細目)で一枚で二役のものがありますので、こちらをお勧めいたします。amazonで¥2000くらいです( SK11 両面ダイヤモンド砥石 #400 #1000 204×65×7mm

 

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