みんなで製材ワークショップ:地域のシンボル、樹齢100年超の大木をみんなで製材
直径70cmもある大木を、一般の方々に作業に参加していただきながら製材して、丸太からその日のうちにスプーンなどまで作ってしまおうというイベントです。
「地域のシンボル、樹齢100年を超える大木が伐られちゃう」
駆けつけた現場で即断即決を求められるのはいつものこと。木の状態、得られる材の量と質、作業の段取り、費用の概算など、一刻の猶予もない中で検討しなければなりません。そして一歩現場に踏み込んで、回収したいと手を挙げるのか挙げないのか。
正直今回は、十中八九見送ることになると思いながらの現場入りでした。回収するとなったら少なくない出費を覚悟しなければなりませんし、現状、街の木は回収すればするほど赤字はかさみます。その上このときは、確保していた木の置き場所がいっぱいになってもいたのです。
とはいえ、現場を見に行ってしまうと簡単には諦められなくなるものです。
今回のイベント「みんなで製材ワークショップ」は、そんな苦しい状況があったからこそ考えられたものでした。これまで裏方の作業として見せて来なかったしんどい部分を、イベントとしてやってみる。
イベントにして、参加者を募り、集まってくださった方々と力を合わせて作業に取り組む。必要な費用の一部を、参加者の方々に少しずつ参加費として負担していただく。自分たちのキャパがいっぱいだからもうできない、ではなくて、みんなの力でなんとかしてみよう。
ということで直径70cmもある大木を、一般の方々を集めて製材してしまおうというイベント『マチモノ製材ワークショップ』が開催されることになりました。
小さな人間が巨大な自然の賜物に群がってワーワーやって、大騒ぎしながら生きる糧を作っていく。大きな丸太とみんなで取っ組み合い、製材だけではなく、製材した先からスプーンとかお皿とか、その日のうちに作っちゃおう!
実際の作業、まずは樹皮むきから。お子さまでも専用の皮むきがあれば楽しく安全に出来る作業です。ほかにも丸太の上に乗って斧ではつってみたり、色々な道具を体験。 皮むきも斧も、昔の道具を直したもの。ボロボロだった柄は街で伐られた木で新しく挿げ替えられています。
丸太の下部、大きな枝を剪定したところから下は痛みが入り、中心部が不朽していました。その部分を、横挽き専用の鋸、窓鋸(まどのこ)を使ってカットします。
この部分は、あえてチェーンソーなどで切らずに、斧やクサビで割るという方法を体験。斧を打ち込む。クサビを打ち込む。ハンマーで叩く。100年を超えて生きて来た木の堅いこと。手強いこと。
割った木材、芯の部分は腐朽していましたが、周辺の部分は健康でしたので、これを小物作り用の木材にしていきます。割ってデコボコしている表面にある程度カンナをかけて平らにした後は、巨大丸ノコが大活躍。巨大な丸ノコ刃が回るので、スイッチを入れただけで後ろに持っていかれます。
そこから先、様々な電動工具を駆使して綺麗な板や角材にしていきます。実演しながら、各種の電動工具がどんな働きをしてなにができるのか、どんな隠れた危険があるのかなどレクチャーしていきます。
こうした機械はホームセンターやネットでも簡単に買えますが、刃に触れたら危ない!のは当たり前で、それ以外にも、なぜそういう事故が起こるのか、知らないと想像することが難しい危険があります。使用前に事故が起こるパターンを知っておくことが大切です。
皆が製材に汗を流してる間、お昼ご飯の準備も進みます。メインはカレーなのですが、カレーに添える野菜は??と子供たちと皆で畑に収穫。ついでにたわわに実った夏みかんも!みずみずしくて甘酸っぱい!
差し入れのマシュマロや石焼き芋も。
燃料はもちろん街の木の製材や木工をした際に出た端材です。
お昼は野菜たっぷりカレー。因みにターナーは桜の木の手作りターナー。穫れたての大根スティックと白菜の浅漬けで食べました♪
午前の部、参加者の方がハイライト動画を作ってくださいました→こちら
午後は製材の作業を進める一方、小物作りのレクチャー&製作体験。みんなそれぞれに作りたいものの加工に入っていきました。
丸ノミと小刀でスプーンを作ったり、
お皿を作ったり、
バンドソーでスプーンの輪郭を切り出します。
製材で出た三日月型の板から材をとるチームも。
木と向き合う、集中する。
製材作業も進みます。皆で代わる代わる大鋸を挽きます。
大変ですが、その大変も皆で共有すると楽しいものです。
コツを教え合ったり、感覚を掴みつつ、
そうして大きな一枚板が出来ました!! 大変重いので男衆が全員集合して降ろしました。
挽きたての木材はじっとりと濡れて重く、湯気が立つように香りを放ちます。「生き物感がハンパない!」とは、参加者の言。
おやつは隣町で伐られたソメイヨシノチップでスモークしたうずらの卵。
大きな松から思い思いの作品が生まれました。
大きくて硬くて重いゴジラ松、その最後に大勢の人が集まって、たくさんの思い出が出来ました。ご参加いただいた皆様からは、次の日、筋肉痛になったとか手が震えるといったメールをたくさんいただき、今も交流が続いています。
大きな木が伐られるという出来事は、その木の終わりではなく、その木をきっかけに新たな人のつながりや、木材に姿を変えた木がまた街に戻ってくる物語のはじまりです。
この日にできた一枚板は、ゴジラ松の足元にあるコミュニティ施設、タガヤセ大蔵にてこれからを過ごします。また残りの材は、来月、公園で開催するイベントで活かされる予定です。